第745号12月6日火【昭和天皇御製を読む 403】御製まで 114。昭和天皇のみどり 74。

【火曜日【禍】壇】偉人伝。わが子どもが。よろこびぬるか。
わが母が五十年前に炊き呉れしうずら豆のいろの茶の淡きかな
金時豆を炊きにけり。十時間を気にかけつすればうまく炊けにけり
楽しみは、金時豆を届ける。わが子ども弁当のおかずによろこびぬるか
母が炊く大豆のまめの硬目に炊けば歯応えのよき、ちひさく締まりぬ
あめいろの金にひかれば母が炊きし大豆のつぶの皺皺まで甘き
けさの夢に母を訪ぬればやさしくして五百円ひとつ百円ふたつ呉れ給ひぬ
【窓を開けて……Get fresh air】短歌が“普遍”を歌うこと 4。香韮(かうご)。の清潔凄烈。を。
温めし紅茶の苦さけふわれはやさしき人をすこし拒んだ
夜の気に冷やされゆく香韮(かうご)あり何に引き替へ得たる残年
……三島麻亜子 2011年12月
ブログ『勝手に選歌』参照。↓。
http://nousan.blog.ocn.ne,jp
感情の襞襞をさぐり、端正に言葉に置いてゆく。
三島の魅力は、文体の端正、清潔、に在る。
三島のうたうものはすべてこの世にある清潔である。文体がその清潔にかなうものとして完成されている。これが尊いのである。文体がこの世に化(な)っている。短歌はここまでゆかねばならぬ。ものであろう。
……何に引き替へ得たる残年
ある種の悔恨に似た記述も、
……得たる残年
……/ e-ta-ru-za-nn-ne-nn /
結句の物凄い響きをたてる。この毅然。をヤシマはよろこぶ。
【 瀬音 皇后陛下御歌集を読む 19 】
昭和42年1967年。 五首。ひかりの歌人 13。春。への序詞、に
……歌会始御題 魚
手習へる紙の余白に海と書く荒磯(ありそ)に君が魚獲(うをと)らす日を
……二月堂お水取り
きさらぎの御堂(みだう)の春の言触(ことぶれ)の紙椿(かみつばき)はも僧坊(そうぼう)に咲く
きさらぎの……紙椿。はも
御堂の……紙椿。はも
春の……紙椿。はも
言触の……紙椿。はも
……きさらぎの御堂の春の言触の……紙椿。はも……僧坊。に、咲く
うつくしい序詞。朱と真っ白の和紙の造形のひかりの紙椿のはなが、淡い翳の充たす空間にあらわれる。目にどれほどの鮮やかさであらわれるか。春はこのように文体されて初めてこの世にあらわれる。短歌でうたわれないうちは、この世にあらわれない。比喩ではなく。
きさらぎの御堂(みだう)の春の言触(ことぶれ)の紙椿(かみつばき)はも僧坊(そうぼう)に咲く
このお歌を Text でみると、縦書きである。ルビが四ヶ所にふられて在る。このルビの可憐な、楽譜でいえば、装飾記号的なうつくしさがある。ブログ画面ではその再現は不可能である。このうつくしさ、可憐さは Text 『瀬音』大東出版社、によらなければ体感できないものである。
あでやか、である。
ことし1月1日に発表された御歌をおもいだす。あでやかそのものであった。豪華絢爛たる春のうた。
……明治神宮鎮座九十年
窓といふ窓を開きて四方(よも)の花見さけ給ひし大御代(おほみよ)の春
……二月堂お水取り
……みだう…ことぶれ…かみつばき…そうぼう
きさらぎの御堂の春の言触の紙椿はも僧坊に咲く
ブログではこれが限界か。
【昭和天皇御製を読む 403】 御製まで 114。昭和天皇のみどり 74。
昭和50年1975年のみどり 1。全七首。たからかに。鶏のなく。
……祭り(歌会始)
わが庭の宮居に祭る神々に世の平らぎをいのる朝々
……滋賀県植樹祭
金勝(こんぜ)山森の広場になれかしといのりはふかしひのき植ゑつつ
やまみちのみどりにはえてたにうつぎうす桃色にさきみちてあり
……湖畔の宿にて
比良の山比叡の峯の見えてゐて琵琶の湖暮れゆかむとす
……米国の旅行を無事に終へて帰国せし報告のため伊勢神宮に参拝して
たからかに鶏(とり)のなく声ききにつつ豊受の宮を今日しをろがむ
昭和天皇の聴かれる鶏の声は、象徴である。
この豊受の宮に聴かれる鶏の声のいかに明かるいか。
……たからか。に
……/ ta-ka-ra-ka---ni /
a, a, a, a, 。明朗な母音にひびかせる。
昭和7年1932年の暗黒のときの御製を見る。
……暁鶏声
ゆめさめてわが世を思ふあかつきに長なきどりの声ぞきこゆる
この不気味さはどうだろう。
……声ぞきこゆる
……/ ko-we-zo-ki-ko-yu-ru /
くちびるが凍りつくような。声にならない。
o, we, o, i, o, u, u. 。呻き声にひとしい。
この暗黒の時、昭和天皇は夢にも、たからかに鳴く鶏の声を生きて聴くことができるとは、思われなかったであろう。
御製に正確無比にその御心情があらわれている。ゆゑ。に。である。
矢嶋博士


